研究概要 |
ユビキチン様蛋白質SUMOによる蛋白質翻訳後修飾は、標的蛋白質の構造的変化や細胞内の特定部位への局在化に寄与し、蛋白質間の相互作用および蛋白質-DNA間の相互作用に働いている。また、蛋白質分解システムのユビキチンに拮抗して蛋白質を安定化して細胞周期の調節やDNA修復に関与する。このようなSUMOの基本的な働きは、発癌、炎症、ウィルス感染、先天性疾患などの病態を理解するために重要である。SUMOファミリーには、SUMO-1,-2,-3,-4がゲノムに存在し、SUMO-2/3はそのアミノ酸構造は酷似し、細胞に対する物理的、科学的ストレスに応答して高分子量化することが観察されている。私たちは、これまでにSUMO-1およびSUMO-2/3が膵臓に遊離型として多量に存在し、腺房細胞に局在することを見い出しその意義について検討し、以下の知見を得た。(1)ユビキチン様蛋白質SUMOと相互作用する蛋白質としてTTRAPを同定された。(2)TTRAPは弱いAPエンドヌクレアーゼ様活性を持つことを明らかとなった。(3)TTRAPによる転写制御における役割としてTTRAPとSUMOとの相互作用が重要であることが示唆された。(4)TTRAPはTDGを介してDNAと結合することが明らかになった。(5)TTRAPはTDG,PCNA,p53等を介してSUMOと相互作用する可能性が示唆された。(6)現在、マウス胎児および膵癌試料を用いた免疫組織化学的解析によって様々な知見を得つつある。今後の展開として、(1)各種膵臓疾患におけるSUMOの免疫組織化学的解析をさらに行う。(2)腺房細胞を用いてSUMOおよびSUMO関連蛋白質のノックダウンによる体系的解析を行う。(3)膵臓疾患におけるSMAD4のSUMO修飾の状態を解析する。(4)転写抑制機構における非共有結合型のSUMO結合モチーフ(SBM)と病態との関連について解明したい。
|