平成17年度は主に肥大心におけるTRP発現とその発現調節に関して主に研究し、翌18年度は、そのTRPC1の機能的役割の解明を行った。その結果、以下に示す新しい知見を得た。1)心発達過程において、TRPC1を含む数種類のTRPチャネルが成獣期よりも胎生期に多く発現するという胎児性心筋タンパクの性質を有する。2)肥大心や不全心などの病的状態では、TRPC1の再発現がおこり、それはNRSFというrepressorによって発現が制御されている。3)そして、心筋肥大形成過程では発現の増加したTRPC 1がストア作動性Ca^<2+>流入の流入経路として働きcalcineurinlNFATシグナル活性化とそれに続く心肥大反応を促進している。4)TRPC1のknockdownにより心肥大反応が抑えられ、今後TRPC1は、新しい心肥大治療のターゲットタンパクとなる可能性がある。さらに、平成18年度は研究の対象を動脈硬化の基礎となる血管平滑筋細胞の成長にもひろげ、5)ヒト冠動脈平滑筋細胞においては、Angiotensin IIや血管炎症により生じるNF・kBがTRPC 1の発現増加をひきおこすこと。6)その結果、ストア作動性Ca^<2+>流入が増加し、血管平滑筋細胞の肥大が促進されることを明らかとした。さらに、ストア作動性Ca^<2+>流入には、 TRPC1のほかOrai1のN末端とSTIM1の結合が重要であることも明らかにした。
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