選択的アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の臓器保護効果は、高血圧患者の心血管病発症の抑制に有用であると考えられている。脈波伝播速度(baPWV)は簡便に動脈硬化度を評価できるとして臨床応用が広がっている。バルサルタンによる高血圧治療がbaPWに及ぼす効果を検討した。 53名の外来高血圧患者(本態性高血圧、腎障害を伴う高血圧)(男性25名、女性28名、年齢37-88歳)を対象とした。全例で、体格指数(BMI)、血圧、baPWV(日本コーリン社form PWV/ABI)を測定した。さらに未治療であるか3ヶ月以内にARB及びアンジオテンシン変換酵素阻害薬が投与されていない46症例においては、バルサルタン40〜160m/日の経口投与を開始し、投与開始24週後にbaPWVを再度測定した。バルサルタンの効果はスタチン薬併用した8名と併用しない38名に分けても解析した。 バルサルタン40〜-160mg/日の投与24週間により、血圧は155±2/90±2mmHgから140±3/82±2mmHgに、脈圧は63±2mmHgから59±2mmHgに、baPWVは1853±49cm/sから1682±52cm/sにそれぞれ有意に低下した。baPWVはスタチンを併用投与した10名で、1857+116cm/sから1680+110cm/sに、スタチンを併用投与しなかった36名で1852+56cm/sから1684+60cm/sにいずれも有意に低下したが、両群間に差はなかった。 バルサルタンによる高血圧治療では、降圧とともにbaPWVを良好に低下させ、長期的な血管保護に作用するものと期待された。ることが明らかとなった。スタチン併用の有無によるバルサルタンのbaPWV低下作用に有意な差がなかったことから、baPWVの低下はバルサルタンによる降圧効果の影響が大きいものと考えられた。
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