研究概要 |
ミトコンドリア内膜のK^+チャネルには、ATP感受性K^+(mitoK_<ATP>)チャネルとCa^<2+>活性化K^+(mitoK_<Ca>)チャネルの2種類がある。これらのK^+(mitoK^+)チャネルは、虚血心筋保護に重要な役割を担っている。今回の研究では、性ホルモン(エストラジオールとテストステロン)が2つのmitoK^+チャネルに対してどのような作用を及ぼすか、モルモットの心室筋細胞を用いて検討した。モルモットの心室筋細胞をコラゲナーゼ処理により単離し、MitoK^+チャネル活性化の指標としてフラボプロテイン自家蛍光を測定した。エストラジオール(0.1μM)を作用させるとフラボプロテイン蛍光は増強した(27.1±4.9%,n=4)。MitoK_<ATP>チャネル遮断薬の5HD存在下でエストラジオールを作用させると単独の場合と同様にフラボプロテイン酸化反応が認められた(29.0±4.4%,n=3)が、mitoK_<Ca>チャネル遮断薬のパキシリン存在下では認められなかった(5.6±4.8%,n=5)。一方,テストステロン(10μM)を作用させるとフラボプロテイン蛍光が増強した(28.5±4.3%,n=5)。5HD存在下でテストステロンを作用させるとフラボプロテイン酸化反応は認められなかった(7.3±4.9%,n=6,p<0.01)が、パキシリン存在下に作用させると、フラボプロテイン蛍光は増強した(41.0±5.0%,n=3)。これらの結果は、エストラジオールはmitoK_<Ca>チャネルを活性化するがmitoK_<ATP>チャネルには影響を及ぼさず、逆にテストステロンはmitoK_<ATP>チャネルを活性化するがmitoK_<Ca>チャネルには影響を及ぼさないことを示唆するものである。今後は、これら性ホルモンのmitoK^+チャネル活性化による心筋保護のメカニズムをミトコンドリア内Ca^<2+>過負荷との関連で解明する。
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