研究概要 |
本研究では、ニワトリ平滑筋ミオシンをモデル分子として、ミオシン分子の頭部・尾部接合部(subfragment-2,S-2)の機能的意義を検討した。S-2領域の20および49残基の欠失変異体(Δ20およびΔ49)をバキュロウィルス発現系を用いて培養細胞に発現・精製し、変異型および野生型のミオシン分子のモーター機能を以下の方法で解析した。(1)In vitro motility assay :蛍光アクチンフィラメントが、ATPの存在下でミオシン分子上を滑り運動する速度(V)を計測した。(2)アクチンフィラメントの負荷となるαアクチニンの存在下でVを計測し、フィラメントに作用するミオシン分子の張力が負荷とバランスしてV=0となるαアクチニン濃度(ACT)を求めることにより、ミオシン分子の平均張力を計測した。(3)レーザートラップを用いて、1分子のミオシンとアクチンフィラメントの相互作用で生じる変位(Duni ; unitary displacement)と張力(Funi : unitary force)およびその持続時間(Ton)を計測した。VとACTは変異型(Δ20,Δ49)で野生型に比較して低下しており、特にΔ20ではΔ49に比較して欠失長が短いにもかかわらず、低下が大きかった(V,-38% vs.-23%; ACT,-67%VS.-38%)。然るに、変異型のDuni、Funiは野生型と差がなく、一方、Δ20ではTonが26%延長していた。これらの欠失変異体の速度・張力がともに低下していることから、S-2領域はミオシン分子のモーター機能に重要な役割を果たすが、分子の基本性能であるステップサイズや単一分子の発生張力には影響を及ぼさないことが示された。また、欠失長の短いΔ20の速度・張力がΔ49より低いことから、S-2領域の7個のアミノ酸残基の周期性の重要性が示唆された。
|