研究概要 |
心臓のみならず腎臓の交感神経活動の亢進が心不全の進展に深く関与する。そこで、Dah1ラットを用いて、覚醒下で心臓と腎臓の組織間隙ノルエピネフリン(NE)濃度を同時に測定した。6週齢から食塩感受性(DS)、非感受性(DR)ラットに8%NaCl含有食を投与した。DSラットでは高血圧が発症し、12週齢で代償性心肥大を生じた。一方、DRラットでは軽度の血圧上昇のみであった。12週齢のラットで、麻酔下に50,000wt cut offの半透膜(長さ8mm、内径0.2mm)を有するマイクロダイアリシスプロブを左室壁および腎臓に挿入した。プローブ挿入術から回復した48時間後にプローブをリンゲル液で灌流し、透析液のNE濃度を高速液体クロマトグラフィー法で測定した。覚醒下の細胞間隙NE濃度はDSラットで心臓、腎臓ともDRラットに比べ高値であった。5分間隔の高炭酸ガス(13%CO2)負荷を加えると、いずれのラットにおいても心臓、腎臓とも細胞間隙NE濃度は上昇した。しかし、その上昇程度はDSラットで顕著であった。DRラットでは高炭酸ガス負荷終了後速やかにNE濃度は負荷前のレベルまで低下した。一方、DSラットでは心臓、腎臓とも負荷終了後も細胞間隙NE濃度は高いままであった。'このように、心不全発症前の代償性心肥大期において安静時の組織間隙NE濃度は心臓のみならず腎臓でも亢進していた。さらに、負荷に対し過剰な交感神経応答があり、かつ高い細胞間隙NE濃度が一過性の負荷終了後も遷延した。この負荷に対する過剰な交感神経応答、遷延するNE高濃度は腎臓でも同様であった。このように高血圧性心不全の進展に安静時における交感神経活動の亢進のみならず、心臓および腎臓における負荷に対する過剰な交感神経活動の亢進、さらには負荷後の高いNE濃度の持続が病態の進行を助長すると考えられる。
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