自己骨髄細胞移植による虚血性心疾患の血管新生療法に関しては、その実施に関して当院倫理委員会の承認を得ており、平成16年4月から平成19年3月の間で施行が可能で、適応症例待ちの状況であった。予定入院の虚血性心疾患患者は全例入院時に所定のプロトコールで組織ドプラ法を用いた解析が可能になるよう連続症例で心エコー検査を行い、治療適応症例の出現に備えた。 平成17年7月に1例目の適応症例があり、患者の同意が得られたためバイパス術併用下に自己骨髄細胞移植を施行した。具体的には60歳代の男性患者で、冠動脈造影上3枝病変を有していた。左前下行枝、右冠動パス術可能と判断されたが、左回旋枝はカテーテルによる血管内治療やバイパス手術による血行再建が不可能と判断された。すなわち吻合すべき血管の瀰漫性石灰化、狭小化のため(基本的に径1.5mm以下)事実上吻合が不適切で、かつカテーテルによる血管内治療が不適切と判断された回旋枝領域に対し、自己骨髄細胞移植を施行した。左前下行枝、右冠動脈に対しては、内胸動脈グラフトを用いバイパス術を施行した。 自己骨髄細胞移植に伴う周術期合併症は認めず、術後経過は順調で、左回旋枝領域の移植部位の心筋虚血症状の改善を認めた。術前に組織ドプラ法、超音波後方散乱信号解析に備えた心増超音波画像の記術後同一条件で画像記録を行い現在局所心筋機能改善の経過を観察中である。Tl心筋シンチの術前後の比較、運動負荷心電図、冠動脈造影所見の観察を経時的に評価している。
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