研究概要 |
C反応性蛋白質(CRP)は炎症が慢性的に持続・進展すると考えられる動脈硬化性病変よいマーカであるが、近年、CRP自体による動脈硬化性細胞反応の惹起で報告され、CRPは動脈硬化発症・進展の新しいメディエーターであることも疑われるようになってきた。そこで、CRPによる動脈硬化・血栓形成に関する分子メカニズムを解明するため、CRPの内皮細胞におけるプラスミノーゲンアクチベータ・インヒビター1(PAI-1)の発現誘導につき検討した。培養牛大動脈内皮細胞(BAEC)に精製ヒトCRPやエンドドキシン除去後のhuman recombinant CRP(hrCRP)を投与したところ、CRP濃度依存性にPAI-1の発現誘導が認められた。これらのCRPは、ゲル濾過法によりいずれも5量体構造であることが確認された。またCRPを発現ベクターにてBAECに直接発現させても、PAI-1の有意な発現は認めらなかった。hrCRPによるPAI-1発現は、TATC3(膜透過型の低分子量Gタンパク質Rho阻害蛋白質C3毒素)や、Rhoキナーゼ阻害薬Y-27632により、それぞれ有意な抑制が認められた。さらにhrCRP刺激によって活性化RhoAが有意に上昇することも明らかとなった。BAECにhrCRPを作用さることにより、NF-κB活性は活性化され、この活性化はY-27632により抑制された。またhrCRPによるPAI-1の発現はNF-kB阻害薬であるParthenolide, SN50, BAY11-7082によりそれぞれ有意に抑制された。以上より、CRPのBAECにおけるPAI-1の上昇には低分子量G蛋白質RhoAならびにRho-kinaseの活性化によるNF-κB活性化が関与し、CRPにおける動脈硬化発症・進展にRhoA/Rho-kinazeシグナルが重要な役割を果たしていることが示唆された。
|