研究概要 |
血管拡張や血小板凝集抑制などの作用を有するプロスタグランジンD2を合成するリポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)は冠動脈硬化巣において産生される。そこで、冠血管機能におけるPGD2/L-PGDS系の役割と血清L-PGDS濃度の意義について検討した。心臓カテーテル検査を施行した患者を対象に、血清L-PGDS濃度の測定し、冠血管機能の検討を行なった。冠動脈造影検査上、有意狭窄を認めない狭心症患者96名にアセチルコリン負荷試験を行ない、定量的冠動脈造影法とドプラーガイドワイヤーによる冠血流速度の測定から冠血管機能を評価した。血清L-PGDS濃度は非冠攣縮群(63.9±2.5μg/dL)に較べて冠攣縮群(77.1±4.4μg/dL)において有意に高値であった。血清L-PGDS濃度の規定因子は冠攣縮と喫煙の有無であった。喫煙による補正を行なっても、血清L-PGDS濃度は冠攣縮と関連した。血清L-PGDS濃度はアセチルコリン(3,10,30μg)の冠血管収縮作用と有意に相関したが、内皮非依存性血管拡張剤であるニトログリセリンの冠拡張作用とは相関しなかった。血清L-PGDS濃度はアセチルコリンやパパベリンの冠血流増加作用とは相関を認めなかった。従って、L-PGDSは冠動脈攣縮に関連し、血清L-PGDS濃度は冠攣縮性狭心症の活動性を反映する指標として有用である可能性が示唆された。
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