研究課題
基盤研究(C)
私たちは、ヒト不全心筋サンプルにて小胞体ストレスが生じていることを世界にさきがけて見出した。また、圧負荷不全心にて、心筋アポトーシスの発現と一致して、小胞体発信アポトーシスシグナルCHOP/GADD153の発現が増加することを報告した。その後、遺伝子改変マウスを用いて、両者の因果関係の検討をおこない、CHOP遺伝子欠失マウスでは圧負荷による心筋アポトーシスならびに心機能低下が軽減することを見出し、圧負荷心不全モデルにおける小胞体発信アポトーシスの重要性を示した。また、CHOP発現が心不全にて特異的に上昇することに着目し、心不全の臨床的指標としてCHOP測定キットの開発に着手した。さらに、ヒト不全心におけるユビキチン化蛋白質の蓄積、ならびに、マウス圧負荷モデルにおけるユビキチン化蛋白の蓄積・心臓プロテアソーム活性低下を見出した。これらの新知見は、圧負荷心不全の病態形成に小胞体-U/P系障害が関与することを世界に先駆けて示したものである。また、ヒト動脈硬化組織での小胞体ストレスの役割を検討するため、冠動脈、大動脈の手術・剖検例において組織標本での小胞体ストレス反応を検討した。動脈硬化病変の進行にともない、脂質コアの周囲部を中心に小胞体シャペロンが増加し、小胞体ストレスにより誘導されるCHOPやJNKの増加とTUNEL陽性細胞の増加を認めた。また、培養細胞においては、マクロファージ系のみならず、内皮細胞や平滑筋細胞においても、酸化脂質の負荷による小胞体ストレスの増加、アポトーシスの誘導が認められた。以上のように、私たちは、心血管疾患における小胞体-U/P系を介するアポトーシスの役割について、独創性の高い先駆的な研究を推進している。
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