本研究では心筋および時間特異的p38αノックアウトマウスを用い、種々のストレス負荷モデルの各時相においてp38の発現状態を変化させ、その違いから起こる表現型などの違いを検討し、細胞保護と細胞死の二面性に対するp38の役割の解明ならびにそれに関わる分子の同定を試み、心不全治療につなげることを目的とする。 p38αエクソンの両端イントロン部分にloxPを挿入したfloxed p38αマウスおよびタモキシフェン投与時にαMHCプロモーターにてCreリコンビナーゼを発現するマウスを作製した。それらのマウスの交配により、タモキシフェンの投与時に心筋でp38αをノックアウトできるマウスを作製した。このマウスでのタモキシフェン投与1、2、3、7日後などのp38αおよび他のMAPキナーゼ系の発現を検討しつつある。マウス圧負荷モデルは負荷後1週間でストレス応答である心肥大、4週でストレス破綻状態である心不全になる。そこで、このマウスにタモキシフェンを投与し、圧負荷前、圧負荷心肥大期にp38αを欠失させ、心エコーによる評価を開始した。osmotic minipumpによる薬剤負荷前、負荷後にp38αを欠失させ病態に与える影響を評価する前に、野生型マウスを用いた薬剤の投与量に関する基礎的検討を始めている。 その一方、ストレス応答時の代償的肥大、破綻による細胞死に関する研究として、アポトーシスに関わる分子であるASK1が虚血再灌流時にネクローシスにも関わること、および圧負荷による心肥大が抗酸化剤であるedaravoneで抑制され活性酸素種が治療のターゲットになることを明らかにした。さらに、心筋リアノジン受容体の機能不全が心不全進展に関与していることが知られているが、プレセニリン2が心筋リアノジン受容体と結合し、その機能を制御していることを明らかにした。
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