研究概要 |
○血管局所におけるToll-like受容体(TLRs)発現が家兎頸動脈動脈硬化病変の発症、進展に及ぼす影響の検討: 【方法】家兎を高コレステロール含有食で飼育し、1週間後に総頸動脈にバルーンカテーテルを挿入しHVJ-リポソーム法を用いてヒトTLRs(TLR2,TLR4)を血管壁に導入した。そして、リポソームのみを導入したコントロール群、ヒトTLR2を導入した群、TLR4を導入した群、両者を導入した群の3群にわけ、遺伝子導入2週間後における頸動脈の動脈硬化性病変を病理学的に検討した。 【結果】導入遺伝子は主として血管平滑筋細胞、一部は内皮細胞に導入されていた。また導入部位に炎症細胞の浸潤、特に単球の浸潤は認めなかった。 2週後においてコントロール群では導入部にほとんど内膜肥厚は認められなかったが、TLR2およびTLR4を導入した群では、それぞれ同程度に脂肪沈着を伴った内膜肥厚、すなわち動脈硬化性病変が軽度認められた。 一方TLR2とTLR4の両者を導入した群では、著明な動脈硬化病変が認められた。 血管壁での接着因子の発現を検討すると、コントロール群ではICAM-1、VCAM-1いずれの発現も認められなかったのに対し、TLRs導入群ではこれらの接着因子発現が認められ、特にTLR2とTLR4の両者を導入した群では平滑筋を中心に著明なVCAM-1の発現が観察された。 【考察】本研究により、血管局所、特に血管細胞におけるTLR発現が動脈硬化の発症進展に重要であることが判明した。さらにTLR2とTLR4の両者が存在すると動脈硬化が相乗的に増強することは興味深い所見であり、おそらく両受容体のシグナル伝達のクロストークにより、接着因子をはじめとした種々の動脈硬化関連遺伝子の発現が増強する機序が考えられた。
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