研究概要 |
酸化ストレスによるMnk活性化の分子機序 酸化ストレス(H_2O_2)刺激によるMnkおよびeIF4Eの活性化は低分子量G蛋白質Ras, Rho, Rac, Cdc42の不活性型変異体(DN)のうち、DN-Rasのみにより抑制された。またPD98059およびSB203580により抑制されたがJNK阻害薬SP600125によっては抑制されなかった。このことから酸化ストレスによるMnkの活性化にはRas-MEK-ERKの経路およびp38MAPキナーゼが重要であることが明らかとなった。ASK1はROSシグナリングにおいて重要とされており、またp38MAPキナーゼの上流分子の一つでもあるが、DN-ASK1の発現によっても酸化ストレスによるMnkの活性化もp38MAPキナーゼの活性化も影響を受けなかった。酸化ストレスによるMnkの活性化におけるp38MAPキナーゼの上流のシグナル伝達機構は未だ不明である。 Mnk1/2の核内における局在の解析 酸化ストレスによりMnkが核内に移行し小斑状に局在していた。興味深いことにMnkの中でもリン酸化すなわち活性化されたMnkが主として核内に移行する傾向が見られた。さらに核内の高次構造体との局在を比較したところ、MnkはPML bodyと主に局在が一致していた。 Mnkの遺伝子発現における役割 DN-Mnk1によりAngiotensin IIによる細胞外マトリックスOsteopontinの転写活性が著名に抑制された。その機序は不明であるがMnkが特定の遺伝子の発現に関与している可能性が示唆された。 これらの知見はMnkの新たな機能を示唆し、今後の心血管疾患におけるMnkの役割に関する研究の手がかりになるであろう。
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