研究概要 |
我々はGa14-DNA結合ドメインとBMK1/ERK5との融合蛋白を発現するベクターを用いたdual-luciferase reporter gene assayによる定量的BMK1/ERK5活性測定システムを開発し,スタチン系薬剤であるpitavastatinが培養血管内皮細胞において濃度依存的にBMK1/ERK5を著明に活性化することを見出した.Atovastatinおよびsimvastatinにも同様のBMK1/ERK5活性化作用が認められたことから,この作用はスタチンのclass effectと考えられる.スタチンによるBMK1/ERK5活性化作用はコレステロール合成経路の中間産物であるGGPPの添加によりほぼ完全に消失した.GGPP生成抑制はRhokinaseの抑制を介して多面的作用を発揮すると考えられてきたが,Rho kinase阻害薬であるY27632にはBMK1/ERK5活性化作用が認められなかったことから,BMK1/ERK5活性化はRho kinase抑制に依存しない新たな血管内皮機能制御機構と考えられる.さらにpitavastatinは内皮型一酸化窒素合成(eNOS)のプロモーター活性を亢進させ,eNOSのmRNAと蛋白発現を増加させたが,BMK1/ERK5のsiRNA導入により,eNOSプロモーター活性亢進作用はほとんど消失した.最近の報告では,血管内皮細胞機能維持に重要であるシェアストレスがBMK1/ERK5活性化を介して転写因子であるKLF2の発現を増加させ,その結果,eNOSプロモーター活性亢進およびeNOS発現増加をきたすことが報告されており,スタチンによるBMK1/ERK5活性化はKLF2を介して血管内皮機能の中で最も重要であるeNOS発現制御に重要な役割を果たしていると考えられる.
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