研究概要 |
動脈硬化、高血圧、冠動脈及び脳血管攣縮、肺高血圧症などの血管病や、血管形成術後再狭窄病変の成因や病態に血栓形成や出血は深く関わる。トロンビンを代表とする蛋白質分解酵素は、プロテイナーゼ活性化型受容体を介して血管収縮や増殖、透過性亢進、内皮由来血管作動物質の産生などの血管作用を発揮する。従って、トロンビンは、単に凝固因子としてのみならず、これらの作用を介して、血管病の病態に関与すると考えられる。しかしながら、血管病の病態形成におけるプロテイナーゼ活性化型受容体の役割についてはほとんど解明されていない。本研究では、血管病の発症、進展におけるプロテイナーゼ活性化型受容体(Proteinase-activated receptor : PAR)の役割を明らかにすることを目的した。特に血管病変部における病態の中心を成す「血管の緊張と増殖性の亢進」に焦点を絞り、(1)血管バルーン障害モデルにおける緊張と増殖性の亢進、(2)くも膜下出血モデルにおける出血後脳血管攣縮、(3)肺循環系の血管緊張亢進について、解析を行った。また、生理学研究として、(4)内皮細胞におけるトロンビンによるCa^<2+>非依存性NO産生機構の詳細を明らかにした。本研究の結果、血管系におけるプロテイナーゼ活性化型受容体の生理学的および病態生理学的役割について、以下の新しい知見が得られた。 1.低分子量G蛋白質Rac1によるトロンビン受容体発現調節機構の同定 2.バルーン血管障害モデルにおけるPAR1,PAR2の発現亢進と収縮反応性の亢進 3.クモ膜下出血後脳血管攣縮の新たな発症機構の発見 4.正常肺動脈におけるトロンビン収縮機構 5.PAR4を介したCa^<2+>非依存性NO産生機構の同定
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