急性冠症候群の発症に炎症が関与することが知られている。歯周病は若年時より発症し慢性炎症のフォーカスとして口腔内に留まり続ける。本研究の目的は歯周病の原因細菌と冠動脈疾患との関連を明らかにすることである。循環器内科に入院中の患者さんで本研究に協力の得られた冠動脈病変を有する患者さん80人と急性冠症候群で入院となった20人について歯科・口腔外科受診をしていただき歯周病の有無および程度を評価してもらった。喫煙本数に加えてprobingによる出血歯数、歯槽骨骨吸収が歯根長の二分の一以上の歯数、dental plaqueの付着歯数、6mm以上の歯周ポケットを有する歯数の残存歯数に対する割合を検索し、その結果をポイント化して総合計した歯周病スコアを算出した。また、歯周病菌prevotella intermediaに対する血中抗体価を測定した。その結果、probingによる出血歯数と6mm以上の歯周ポケットを有する歯数の残存歯数に対する割合は冠動脈疾患群に比し急性冠症候群で有意に多かった。骨吸収の強い歯数の残存歯数に対する割合や喫煙本数は急性冠症候群で高い傾向であった。これらの結果をまとめた歯周病スコアは有意に急性冠症候群で高かった。prevotella intermediaに対する血中抗体価は急性冠症候群の患者で有意に高値であり、急性冠症候群患者の強い骨吸収を有する歯数の残存歯数に対する割合と有意な相関を示した。これらは2007年3月の日本循環器学会で発表予定である。このように歯周病の重症度や歯周病菌は急性冠症候群と密接に関連していることが示唆された。現在、歯周病菌に対する抗体価と冠動脈病変との関連について検討しているところである。
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