最近、進行した歯周病を有するひとほど虚血性心疾患を発症しやすいという報告がみられる。このため、虚血性心疾患患者の歯周病の程度を判断する指標として歯周ポケットの深さ6mm以上の歯の数、probing時の出血歯の割合、脱落歯の数、X線撮影による歯槽骨の骨吸収が歯根長の1/2以上の歯の割合、喫煙状況をスコア化して評価した。その結果、冠動脈造影によって明らかとなった冠動脈疾に有意狭窄を有する患者とそうでない患者を比較すると骨吸収と喫煙状況および総合歯周病ポイントは有意狭窄群で有意に高値であった。また、脱落歯のない60才未満では前述の3つに加えて歯周ボケットの深さ6mm以上の歯の数も有意に冠動脈狭窄群で多かった。このように歯周病は冠動脈病変と関連していることが明らかとなった。一方、60才以上の高齢者や糖尿病患者および耐糖能障害患者ではこれらの関連性が有意ではなくなることも明らかとなった。急性冠症候群患者と安定狭心症患者群の比較では、急性冠症候群患者においてprobing時の出血歯の割合と総合歯周病ポイントが有意に高いことが明らかとなった。歯周病菌の中でもPorphyromonas gingivalisとPrevotella intermediaに注目し、両細菌に対する血中抗体価を測定した結果、Prevotella intermediaに対する血中抗体価は有意に急性冠症候群患者で高かったが、Porphyromonas gingivalisでは有意な差はなかった。さらに総合歯周病ポイントはこのPofphyromonas gingivalisおよびPrevotella intermediaに対する血中抗体価と有意な相関をした。このように歯周病菌に対する抗体価は歯周病の程度や虚血性心疾患の病態を反映する可能性が示唆された。
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