本研究では、心筋虚血再灌流モデルを作成後、6時間、1、3、7日の観察期間の後、両者における心筋梗塞形成度、梗塞巣内における炎症細胞浸潤度と梗塞組織の線維化を比較検討した。まず、好中球、マクロファージの各モノクローナル抗体を用いた免疫染色により、梗塞巣における炎症細胞数をカウントし、両群における心筋虚血領域の炎症細胞浸潤度を比較検討した。好中球浸潤度にはwild-type、CCR2欠損マウス両群に差はみられなかった。一方、マクロファージの梗塞巣内浸潤度は両群とも3日目にピークとなり、wild-typeマウスに比し、CCR2欠損マウスでは1日目、3日目の梗塞内浸潤が有意に抑制されていた。Triphenyltetrazolium chloride染色により残存心筋組織(赤色)と梗塞心筋組織(白色)とを肉眼的に識別し、さらにevans blue染色液により非結紮部位を青に染色することにより、心筋虚血に曝された領域における心筋梗塞形成領域の割合(Infarct/AAR)を算出した。虚血再灌流3日後のInfarct/AARはwild-typeマウスでは37.3±2.2%であったのに対し、CCR2欠損マウスでは22.4±2.4%と梗塞領域が有意に軽減していた。また、再灌流7日目の線維化の程度をハイドロキシプロリン定量により検討すると、CCR2^<-/->マウス(0.54±0.1μg/mg)ではwild-typeマウス(0.92±0.1μg/mg)に対し有意に減少していた。さらに、細胞外マトリックスの分解酵素であるMatrix Metalloproteinases(MMPs)の活性を検討するため、組織中のゼラチン分解活性をin situ zymographyを用いて検討し、ゼラチン分解活性が生じた領域の面積を算出した。梗塞領域に対するゼラチン分解活性陽性面積は、CCR2欠損マウスにて有意に抑制されていた。
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