研究課題
基盤研究(C)
【目的】動脈硬化や血管傷害後の内膜増生の病態生理における骨髄AT1、AT2受容体の役割を明らかにする。【方法】(1)AT1受容体欠損(AT1-KO)マウスまたはAT2受容体欠損(AT2-KO)マウスの骨髄細胞で置換した骨髄移植モデルを作製し、大腿動脈血管傷害後の新生内膜増生を検討した。(2)アポE欠損(apoE-KO)マウスの骨髄をAT1-KOマウスの骨髄で置換した骨髄移植モデルを用いて動脈硬化形成機序における骨髄AT1の役割を検討した。【結果1】BM-WTマウスと比べてBM-AT1-KOマウスでは、新生内膜増生が著明に抑制され、BM-AT2-KOマウスでは著しく増強していた。血管傷害後の末梢血単球数(CD11b^<hi>)および骨髄由来血管前駆細胞(Sca-1^+/c-Kit^-/Lin^-)数は、BM-AT1-KOマウスでBM-WTマウスに比べて著しく低下していた。また新生内膜内単球数およびSca-1^+細胞数が、BM-AT1-KOマウスで著明に低下していた。一方、BM-AT2-KOマウスではBM-WTマウスに比べて血管傷害後の単球数、Sca-1^+/c-Kit^-/Lin^-細胞数に差を認めなかったが、CCR2^+単球数が有意に多く、Sca-1^+/c-Kit^-/Lin^-細胞におけるCXCR4発現も有意に増加していた。【結果2】ApoE-KO/BM-AT1-KOマウスでは、16週齢時における動脈硬化病変領域はapoE-KO/BM-WTマウスに比べて57%抑制されていた。MOMA-2陽性細胞の集積はapoE-KO/BM-AT1-KOマウスにおいて62%抑制されていた。オイルレッドO陽性領域はapoE-KO/BM-AT1-KOマウスにおいて有意に低値であった。一方、末梢血中の活性化単球(Ly-6C^<hi>)数はapoE-KO/BM-AT1-KOマウスで有意に抑制されており、CCR2^+およびCX3CR1^+単球数もapoE-KO/BM-AT1-KOマウスで有意に減少していた。造血系幹細胞(HSC)数は両群間で有意差を認めなかったものの、Common myeloid progenitorsおよびGranulocyte/Macrophage Progenitors数はapoE-KO/BM-AT1-KOマウスにおいて有意に減少していた。【結論】骨髄AT1受容体は主に骨髄造血系幹細胞から単球・マクロファージ前駆細胞や血管前駆細胞への分化・増殖を促進することにより、動脈硬化や血管傷害後の新生内膜増生を増大させる。一方、骨髄AT2受容体は主に末梢血中の単球や血管前駆細胞の活性化抑制を介して動脈硬化や血管障害後の炎症反応を抑制することが示唆された。こうした骨髄AT1、骨髄AT2受容体の心血管病の病態生理における詳細な機能解析は、骨髄細胞を標的とした新たな治療法の開発に発展することが期待される。
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