研究課題
基盤研究(C)
動脈硬化症は高脂血症、高血圧をはじめ種々のリスクファクターが関与する複合疾患である。近年、動脈硬化巣にグラム陰性細菌の肺炎クラミジアが検出され、本菌の感染による慢性炎症が新たなリスクファクターとして脚光を浴びているが、クラミジアの特殊な生育環境のため、動脈硬化における役割についてはまだほとんど解明されていない。申請者はグラム陰性細菌の主要な菌体成分であり多彩な生理作用を持つLPSに着目した。そこで、申請者は、肺炎クラミジア感染による動脈硬化のリスクの正確な把握とそれを軽減するための基礎研究として、肺炎クラミジアLPSの生理作用とそれに対する生体防御反応である自然免疫機構を明らかにすることを目的とし本研究を行った。まずヒト単核球に対するクラミジアLPSの結合能と活性化能を検討したところ、大腸菌LPSに比べると著しく弱いものの、LPS結合タンパク質(LBP)依存的にLPS受容体のCD14およびTLR4に結合し、炎症性サイトカインの産生を誘導した。次にLBPおよびCD14に対するクラミジアLPSの結合をELISAで検討したところ、LBPには濃度依存的に結合した。また、CD14に対してはLBP依存的に結合した。しかしどちらの結合能も大腸菌LPSに比較すると弱かった。さらに、低密度リポタンパク質(LDL)に対するクラミジアLPSの結合能をELISAで検討したところ、未変性LDLには濃度依存的に結合したが、酸化LDLへの結合は著しく低下した。興味深いことにLBPを添加するとクラミジアLPSの未変性LDLへの結合能が抑制されたのに対し、酸化LDLに対してはLBPの濃度依存的にクラミジアLPSの結合量が増大した。以上の結果より、クラミジアLPSはユニークな構造ゆえに生物活性も低くなっていることが示唆され、局所での慢生炎症に寄与してる可能性が考えられた。またLBP存在下で酸化LDLへの結合能が増大することは、酸化LDLを取り込んだ細胞の活性化を促進させる可能性も示唆された
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