研究概要 |
心筋梗塞、脳梗塞などの動脈血栓性疾患を病態の共通点に着目してアテローム血栓症と抱括的に理解する方向にある。アテローム血栓症の発症には血小板が必須の役割を演じる。動脈硬化巣の破綻部位における血小板の集積と活性化、血栓形成のメカニズムを明らかにするために、血小板膜蛋白の局在の動的イメージングを試みた。GPIb, GPIIb/IIIa, GPVIなどの膜蛋白を認識する特異抗体を異なる蛍光色素で蛍光標識した。血小板を含むヒト血液を、flow chamberを用いてコラーゲン上に任意の壁ずり速度の条件で灌流し、血栓を形成する血小板表面における膜蛋白の動態を観察した。GPIIb/IIIaは血小板上に一様に存在し、活性化とともに表面発現が増加した。一方、GPIb, GPVIの局在は不均一であった。活性化とともにGPIbの発現数は減少した。GPVIは活性化後に局在が均一化する傾向を認めた。2色蛍光を用いて、動的条件にて膜蛋白の相対的関係をイメージングする装置の開発に成功した。当初の計画には含まれていなかったが、動的条件で観察した膜蛋白の局在を、固定後に免疫染色法にて確認する実験も施行し、動的条件での実験結果の妥当性を検討した。さらに、カルシウムイオン感受性の蛍光色素を用いて血小板内カルシウムイオン濃度も、動的条件にてイメージングした。膜蛋白の動態と、カルシウムシグナルの関係について新たな知見を得た。現在、動物モデルへの応用を検討中である。
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