ニポー式の高速共焦点レーザー顕微鏡を用いて、flow chamberによる人工的な血流条件下にて、固相化したコラーゲン、von Willebrand因子と相互作用する血小板の活性化動態のイメージングを行い、流動状態下の血栓形成メカニズムの解明を試みた。代表的な膜糖タンパクであるGPIbαとGPIIb/IIIaは蛍光標識したモノクローン抗体による描出が可能であった。一方、膜表面上の数は少ないが機能的に重要なGPVIの局在のイメージング法の確立は研究期間内に達成することができなかった。ニポー式共焦点顕微鏡は時間分解能に優れるものの、集め得る光エネルギーに限界があるため、単一血小板上に数千分子以上存在しない蛋白の動的リアルタイムイメージングは困難であることが確認できた。 細胞内カルシウムイオン濃度を描出し得るFluo-3を蛍光色素として使用した場合には、血小板内カルシウムイオン濃度のリアルタイムイメージングが可能であった。本法を用いることにより、1)流動条件下にて血小板内カルシウムイオン濃度が周期的に変動すること、2)カルシウムイオン濃度の変化は活性化状態の維持に必須の役割を演じること、3)ADP受容体P2Y^<12>がカルシウムイオン濃度に必須の役割を演じること、4)活性化血小板表面にて産生されたトロンピンもまたカルシウムイオン濃度の上昇に関与すること、5)抗凝固薬とされる抗トロンビン薬にも細胞表面にて産生されたトロンビンの機能を阻害することにより血小板の活性化状態維持を阻害する機能があること、などを示した。 活性化血小板による生理活性物質の局所放出イメージングなど、血栓形成以外の機能に関与する因子のイメージングが今後の課題として残された。
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