研究課題
ストレス障害後の心筋におけるSPRR1Aの局在:SPRR1AのmRNAは圧負荷後4日目頃に心臓において一過性に検出されるが、タンパクの発現は圧負荷後14日目においても認められた。次に、圧負荷後7日目の心臓の組織切片を用いてSPRR1Aタンパクの局在を調べた。その結果、非常に興味深いことに、SPRR1Aは心臓に一様に発現するのではなく、圧負荷後に散在性にfocalに生じる壊死心筋の周囲の残存心筋に発現していた。心筋梗塞モデルにおいても同様に、梗塞部位と非梗塞部位の境界域の残存心筋に強い発現を認めた。SPRR1Aの過剰発現は培養心筋細胞の生存を促進する:次にSPRR1Aの心筋細胞の生存に対する効果について検討した。SPRR1Aを発現するアデノウイルスを作成し、コントロールにはGFP発現アデノウイルスを用いた。Deoxyglucoseで24時間SPRR1A発現心筋細胞とコントロール心筋細胞を処理した。図4Bに示すようにコントロールでは心筋細胞が円形になっているのに対し、SPRR1A発現心筋細胞では形態がしっかり保たれていた。次にphalloidin染色によるF-actinの発現とSPRR1Aの発現の蛍光2重染色を行うことによって、心筋細胞におけるSPRR1Aの局在について検討した。その結果、SPRR1Aは心筋繊維に沿って発現していることがわかった。SPRR1Aの過剰発現はex vivoでの心筋虚血再還流障害を抑制する:ラットの心臓にSPRR1Aを発現するアデノウイルスを遺伝子導入し、1週間後に心臓を取り出し、3時間のLangendorff液による還流の後に30分間虚血状態とし再還流を行った。コントロールにはLacZを発現するアデノウイルスを遺伝子導入した。LacZの活性はbeta-gal染色とbeta-galに対する抗体を用いた蛍光染色で、SPRR1Aの発現はSPRR1Aに対する抗体を用いた蛍光染色で確認した。SPRR1A遺伝子導入群では虚血再還流による心筋障害は有意に抑制されていた。また、虚血再還流後のCPKの値もSPRR1A遺伝子導入群で有意に抑制されていた。HE染色を行ったところ、コントロールの心筋にみられた心筋細胞の融解壊死がSPRR1A遺伝子導入群では有意に抑制されていた。
すべて 2006
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