研究概要 |
線維化肺、肺がんにおけるbasigin/EMMPRINの役割を中心に検討した。当該施設にて肺がんと診断され手術を施行された患者、臨床的に間質性肺炎の診断がなされ、病理診断目的に胸腔鏡下肺生検を受けた患者を対象に。手術摘出された肺組織のホルマリン固定・パラフィン包埋薄切標本をmicrowave法で抗原賦活化後、抗ヒトEMMPRIN抗体(CHEMICON社,1000倍希釈)を1次抗体とし、Catalyzed Signal Amplification(CSA)法(DAKO社)を用いて免疫染色を施行した。basigin/EMMPRINによる誘導が報告されているMMP-1,-2,3-,-9についても連続切片で同様に免疫染色を施行した。また、以前、我々が作成したBAL液を用いた系を参考に、修正を加え測定方法を新たに確立し、同患者の血清やBAL液を用いて、basigin/EMMPRINの濃度をELISA法にて定量した。臨床的背景とその濃度との関係、病理組織上の免疫組織学的検討が可能である検体については、染色性との関係を明らかにした。以上の結果は、平成18年5月、米国胸部疾患学会にて報告し、Hum Patholに学術論文として掲載された。また、名古屋大学との共同研究において、basigin/EMMPRINのノックアウトマウスの供与を受け、気管支喘息モデルを作成している。ノックアウトマウスにおける気道炎症の程度、各種マトリックスメタロプロテアーゼの発現の有無を詳細に現在分析中である。本結果は、平成19年5月に米国胸部疾患学会にて発表予定である。一方、ラット肺気道上皮細胞を用いてbasigin/EMMPRIN遺伝子の誘導機序に関する検討を行った。基底膜構成成分のひとつであるlaminin-1がその誘導能を有することを明らかにした。一連の成果については、平成19年5月日本呼吸器学会におけるシンポジウム、ミニシンポジウム、また同年5月サンフランシスコで開かれる米国胸部疾患学会において多数の演題を発表予定である。
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