研究概要 |
大阪大学遺伝情報実験センター遺伝子機能解析分野で作成された"GFP-transgenic mouse FM131" (C57BL/6 TgN(act-EGFP)OsbC14-Y01-FM131)の骨髄を用いたマウス骨髄移植モデルを作成した.このキメラマウスにエンドトキシンを投与し,マウス急性肺損傷モデルを作成した.急性肺損傷後の肺修復期に,肺組織より肺細胞を分離した.この細胞群を培養すると,上皮細胞マーカーのcytokeratinを発現し,II型肺胞上皮細胞に発現するsurfactant protein Cを発現する,いわゆる肺胞II型肺胞上皮が得られた.さらにこの細胞の中にGFP陽性の細胞群があり,骨髄由来細胞が肺傷害後肺胞上皮細胞に分化し,肺組織修復に関与していることを明らかにした.次に,この骨髄由来細胞が,急性肺損傷後肺の組織幹細胞にも分化し,その後の肺修復に関与するかを検討した.検討には,急性肺損傷後1,2,6ヶ月後の肺組織より肺細胞を分離し,それらの細胞表面マーカーを検討することにより解析した.その結果,急性肺損傷後6ヶ月の段階で,肺胞構成細胞中のGFP陽性の割合が減少した.このことは,肺組織修復初期の段階では骨髄由来細胞が重要であるものの,慢性期には肺既存の細胞が修復にかかわることを示唆した.また,肺組織幹細胞の分画にはGFP陽性細胞は存在せず,骨髄細胞が肺組織幹細胞にはなり得ないと考えられた.以上のことより,肺組織の修復には骨髄由来細胞だけではなく,肺既存の組織幹細胞の存在が重要であることが明らかになった.現在この観点から,気腫化肺の修復における肺組織幹細胞の役割を解明中である.
|