NK4は当初、肝細胞増殖因子(HGF)の拮抗物質として同定されたがHGFに依存しない血管新生阻害作用を有し著しい抗腫瘍効果を示すことが明らかになった。NK4は全身投与でも腫瘍内投与とほぼ同等の抗腫瘍効果を示すが、その際に腫瘍内に発現するNK4蛋白は局所投与に比較し数千分の1にしかすぎず、血清中に検出できるNK4蛋白も微量であった。NK4が腫瘍血管に直接はたらくのではなく何らかの別の機序がはたらいている可能性があり、本研究では骨髄由来細胞に着目した。まず、GFPマウスを大阪大学岡部先生より供与を受けた。このマウスは全ての細胞、組織よりGFPを発現しているため、GFPマウスをドナーとして野生型マウスに骨髄移植すると容易に宿主細胞と移植骨髄由来細胞を区別することが出来る。実際のマウス骨髄移植については宿主マウスに8Gyをかけた後3時間後に3Gyの放射線を追加し、引き続いてGFPマウスの大腿骨より採取した1x10^6個の骨髄細胞を宿主マウス尾静脈より注入することによりキメラマウスの作製に成功した。このマウスに対してマウスLLC腫瘍を移植し、樹立した腫瘍に移植骨髄由来細胞が侵入しているかどうかを確認すると腫瘍内に夥しい数の骨髄由来GFP陽性細胞が認められた。GFP陽性細胞の一部は血管内皮の位置に相当するが、その他に腫瘍間質内に多くが認められた。次に骨髄移植後のマウスにLLCを皮下接種し、その後にNK4アデノウイルスの全身投与を試みた。NK4が投与された腫瘍は骨髄由来細胞の低下が認められ、腫瘍血管の減少も認められた。現在、間質にも認められた骨髄由来細胞がどの分化系統に位置するかを検討中である。
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