研究者はこれまでNK4が血管新生抑制効果を介して腫瘍増殖抑制効果を示すことを報告してきた。その中でNK4の腫瘍内直接投与に比較して腹腔内投与(全身投与)により腫瘍内NK4濃度が低いにも関わらずより有効に腫瘍増殖を抑制した。本研究ではこのNK4の血管新生抑制効果が骨髄由来細胞の腫瘍内動員に関与しているかどうかを骨髄移植マウスに樹立した腫瘍を分析することにより解明を試みた。 方法:骨髄移植マウスはC57BL6マウスに12Gy照射し、その後GFPマウスより採取した骨髄細胞を1x10^6個尾静脈より注入することにより作製した。移植2週間目にはキメラ率約80%であった。このキメラマウスにin vitroでNK4アデノウイルス(AdNK4)もしくは空ベクター(AdNull)を感染させた肺癌腫瘍株(LLC)を皮下に樹立した。皮下投与後腫瘍サイズを経時的にモニターし、14日目に腫瘍を取り出し、蛍光2重染色を行い共焦点蛍光顕微鏡にて解析した。 結果:in vitroにおいてはAdNK4を感染した腫瘍細胞もAdNullを感染させた腫瘍細胞も増殖に差がみられなかったが、マウス皮下に移植されるとAdNK4感染腫瘍の増殖が有意に阻害された。組織の分析では腫瘍細胞に骨髄由来GFP陽性細胞が多数認められた。しかし、血管に一致した細胞は極少なかった。AdNK4感染腫瘍群で著しく血管新生が阻害され、また、骨髄由来細胞も減少していた。骨髄由来細胞を血球系マーカーで染色してみると多くの細胞が染色された。また、腫瘍内VEGF陽性骨髄由来細胞の分析ではAdNK4感染腫瘍で著しく減少していた。このVEGF陽性骨髄由来細胞の由来、分化については同定されていない。 結論:本研究においてはAdNK4感染腫瘍内に動員された骨髄由来細胞と血管新生抑制効果との直接の関係は証明できなかった。しかし、AdNK4感染腫瘍において血管新生と同時に骨髄由来細胞の浸潤も阻害されておりパラクリンなどの間接的な影響を及ぼしている可能性はある。NK4の抗腫瘍効果における骨髄由来細胞と血管新生阻害の関係の解明には更なる研究を要す。
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