研究概要 |
薬物トランスポーターは、薬物の排除による生体防御に重要な役割を果たしており、これらの機能の差異は、薬物反応や薬物代謝に影響を与えることが推測される。本研究は、肺癌に対する抗がん剤の薬物代謝、特に薬剤取り込みと排泄にかかわる薬物遺伝子多型の役割とその機能、ならびにこれらの遺伝子多型測定の肺癌治療における臨床的意義について検討することを目的とした。名古屋大学医学部附属病院ならびに、それぞれの施設での倫理委員会で承認を得た関連医療施設において、イリノテカンの投与が必要とされたがん患者で、書面によるInformed consentの得られた患者を対象者とした。120名の患者の末梢血から得られたDNAを検体として、ABCトランスポーター遺伝子多型解析(ABCC2)を実施した。遺伝子多型解析は、シークエンス法を標準法として用いた。また、遺伝子多型解析の結果と臨床情報との関連を分析・評価し、各々の遺伝子多型の臨床的役割について評価した。ABCC2遺伝子はエキソン1の5'上流域から始まり多くのエキソンやイントロンに遺伝子多型が報告されているが、我々の検討したプロモーター領域、エキソン10,13,18,25の遺伝子多型では、CPT-11の毒性との間に関連を示すことができなかった。さらに、新たな遺伝子多型(2375A>G)が検出したが、毒性との関連は解析できなかった。現在、ABCG2遺伝子多型解析をすすめており、今後CPT-11の毒性、薬理動態との関連を検討する予定である。
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