肺高血圧症、間質性肺炎、肺線維症などの慢性炎症性肺疾患の予後は極めて悪く、有効な治療法も確立されていない。炎症性疾患の病態には、線維芽細胞によるコラーゲン、フィプロネクチンなどの細胞外マトリックス成分の産生・分泌の過剰が、病態形成に関わっていると報告されている。この線維芽細胞は、近年、骨髄幹細胞に由来することが明らかにされたが、線維芽細胞の分化、肺組織傷害部位への線維芽細胞のホーミング、その活性化に関わる因子等は明らかでない。本研究では、活性化プロテインC(APC)の抗炎症作用に基づく抗線維化作用に着目し、炎症性肺疾患の病態形成に関わる骨髄由来線維芽細胞の運動、細胞外マトリックス成分の産生、分泌に対するAPCの効果の分子細胞機構を検討した。その結果、in vitroの実験系ではAPCは線維細胞、上皮細胞、内皮細胞からのplatelet-derived growth factor、granulocyte-monocyte colony stimulating factor、macrophage inflammatory protein-1α、monocyte chemoattractant protein-1、stromal-derived factor-1などの成長因子とケモカインンの分泌を抑制することが明らかになった。また、in vivoの実験系では肺線維症、肺高血圧症などの慢性炎症性肺疾患のマウスモデルではAPCは線維芽細胞のホーミングと肺組織構成細胞からの炎症性サイトカインの産生・分泌を抑制した。以上の結果よりAPCが骨髄由来の線維細胞の活性化に対して抑制効果を示すことが明らかになった。
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