(目的) Bcl-xLはアポトーシスに関連する分子として同定されたが、細胞に対して保護作用を有することが報告されている。しかしながら肺胞上皮細胞に対してBcl-xLが細胞保護作用を有するかどうかについての検討は多くない。そこで本研究ではBcl-xLが肺胞上皮細胞傷害に関与するかどうか明確にするために検討をおこなった。 (結果) 1.ブレオマイシンによる肺上皮細胞由来MLE細胞に対する細胞障害モデルを作製した。ブレオマイシンは濃度依存的に細胞障害を誘導した。siRNAを用いてMLE細胞中のBcl-xL蛋白の発現量をノックダウンすると、ブレオマイシンによる細胞障害が増強することが確認された。 2.過酸化水素負荷による肺上皮細胞由来MLE細胞に対する細胞障害モデルを作製した。過酸化水素は濃度依存性にMLE細胞に障害を誘導した。siRNAを用いてMLE細胞中のBcl-xL蛋白の発現量をノックダウンすると、この過酸化水素による細胞障害は過酸化水素低濃度では増強する傾向が確認されたが、高濃度では影響が確認されなかった。 3.肺上皮細胞にのみ特異的にBcl-xLを欠損するマウス(肺上皮特異的Bcl-xL欠損マウス)を作製した。肺上皮特異的Bcl-xL欠損マウスでは生後の成長に異常は認めなかった。成長後の肺を組織学的に検討したが、特に形態学的な異常は認めなかった。 (結論) 以上の結果よりBcl-xLは肺の発生および成長には必須ではないと考えられるが、肺上皮細胞において各種ストレスに対して細胞保護作用を有することが示唆された。このことは肺上皮細胞におけるBcl-xLを活性化させることが様々な肺障害の治療法となりうる可能性を示唆した。
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