結核は我が国においても近年再興感染症として注目されている。我が国での結核患者の約60%は高齢者であり、そのほとんどは既感染者であり結核感染者のうち生涯を通じて発病するのは10%以下と考えられており大部分は結核菌の潜伏感染の形で生涯を終える。結核感染の宿主防御機構として重要なものにマクロファージがあげられる。ヒトマクロファージ内における結核菌に対する宿主防機構の一つにNO(nitric oxide)やRNI(reactivenitrogen intermediates)による菌の増殖抑制作用が考えられている。我々は結核菌において、この防御機構からの逃避メカニズムの遺伝子学的機序として、ctpF遺伝子が大きく関与しているのではないかという実験結果を得ている。今回この実験結果の確認ならびにこれら遺伝子の具体的な機能の解明を目的とする。 上記結核菌遺伝子ctpF欠損結核菌を作成するためallelic exchange法によりknock outした。knock outした結核菌株を作成し、in vitroにおいてNO、RNI暴露を行い、control株(野生株)と比較し生菌数の変化の比較等の検討を行う。 また、ヒトTHP-1由来マクロファージ等にこれらknock out株を感染させ野生株と比し経時的な生菌数の変化、細胞の生死、アポトーシス誘導等について検討する。さらに将来的に可能ならばマウスを用いてin vivo感染における肺病理像、肺内菌数等の検討を行う。
|