研究概要 |
黄色ブドウ球菌の主要な病原因子の一つであるcoagulaseに対するアンチセンスヌクレオチドやshort-interfering RNA(siRNA)を菌体内に導入し、病原因子の遺伝子をノックダウンした。病原因子の抑制に関してはin vitroおよびin vivoにて解析した。 アンチセンスは、10μMでわずかにコアグラーゼmRNAの発現を抑える傾向にあった。一方siRNAは、2μM投与でmRNAの発現量を約40%まで抑制した。 蛋白レベルの評価であるコアグラーゼ活性に対しても、siRNAは対照群の4分の1まで抑制した。siRNAで前処理したMRSAを感染させた群は、対照群と比べ肺内生菌数は10分の1程度まで抑制されていた。これらの成果より、siRNAはcoagulaseをmRNAレベルならびに蛋白レベルにおいて有意に抑制することが明らかになった。これらの作用はアンチセンスより優れているものであり、siRNAを用いた病原因子の抑制が耐性菌感染症の制御に応用できる可能性が示された。 (Yanagihara et al. Journal of Antimicrobial Chemotherapy) また、緑膿菌慢性気道感染症モデルを用いた解析で、定数感知機構(quorum-sensing systems)が病原性に大きく関与していることが明らかにされ、siRNAの標的になりうることが示された。(Imamura Y, Yanagihara K., et al. Journal of Medical Microbiology) 肺炎球菌モデルを開発し、細菌学的評価も行った。(Fukuda Y, Yanagihara K., et al. Antimicrobial Agents and Chemotherapy)本モデルを用いて、肺炎球菌の病原因子解析ならびに制御を行う予定である。
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