研究概要 |
我々は喫煙による急性好酸球性肺炎(acute eosinophilic pneumonia : AEP)の発症メカニズムに関する病態解析を行なうとともに、それに基づいた血清診断マーカーの開発を目指している。今年度は、AEP14例とその鑑別疾患である急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome : ARDS)16例、急性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia : AIP)10例、過敏性肺炎(hypersensitivity pneumonitis : HP)10例について血清中thymus and activation regulated chemokine(TARC)をELISA法にて測定した。その結果、血清中TARCはAEPで17827±12284pg/mlと著明高値であり、一方ARDSでは658±254pg/ml、AIPでは167±193pg/ml、過敏性肺炎では472±294pg/mlであった。カットオフ値を9000pg/mlとすると感度100%、特異度100%であった。測定日と発症時期との関連についてみると、末梢血好酸球数の増加のみられない発症初期から血清中TARCは高値であり、発症後7日までは高値を持続した。喫煙チャレンジ試験後の血清TARC値の検討では、喫煙後約16時間後に血清TARCの上昇を認めた。以上よりTARCはAEPの血清診断マーカーとして有用であることが示唆された。また、血清KL-6はAEP全例で低値を示し(210±98U/ml)、高値を示すARDS,AIPと区別する上で有用であると考えられた。その一方で、eotaxin,SP-Dは疾患間でその値にoverlapがみられ診断マーカーとしての意義はないと考えられた。 また、喫煙によるTARC産生メカニズムを検討するため、煙草煙懸濁液により肺胞マクロファージあるいは樹状細胞からのTARC産生を解析中である。肺胞マクロファージは気管支肺胞洗浄法により、また樹状細胞は末梢血単球をIL-4,GM-CSFの存在下で培養し、採取し、煙草煙懸濁液で刺激した培養上清中のTARC値を解析中である。
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