研究概要 |
目的:急性肺障害は急峻な呼吸不全により死に至る重篤な病態であり、臨床現場において予防法ならびに治療法の開発は急務である.近年、抗リウマチ薬Leflunomideなど新規治療薬剤の導入に伴い、前臨床や臨床治験段階では予想しえなかった急性肺障害が報告されている.一方、特発性間質性肺炎では古くから「急性増悪」の病態が知られ、日本では欧米諸国に比べて明らかに頻度の高い病態であることが判明してきている.本年度は肺障害の発生に密接に関与するサーファクタント(SP)産生との関連を検討した. 方法:SP産生細胞H441を用いてin vitroにてLeflunomide,プレドニゾロン(PSL)、付随するサイトカイン発現によるSP産生能に対する影響をSP-B mRNA発現で比較検討した.またSP-B転写調節因子であるSTAT3の発現を比較検討した. 結果:PSLは0.3ug/mlの濃度において、SP-B mRNA,STAT3 mRNAの発現を増強した.また、IL-1,IL-6はSP-B mRNAの発現を有意に増強したが、PSLはIL-1,IL-6の発現に影響を与えなかった.一方、PSLは0.3,0.6,1.2ug/mlの濃度において12h,24h後のSTAT3 mRNAの発現を有意に抑制した.IL-1,IL-6にも同様の傾向があり、negative feedbackがかかっていると考えられた.TGF-betaはSP-Bの産生に影響を与えなかった. まとめ:PSL,IL-1,IL-6はSP-Bの産生をむしろ増強し、肺胞構築を保持する要因を増強すると考えられた.Leflunomideについては生体内で活性体(HMR1726)として作用するために、活性体HMR1726による検討が必要となり、今後比較対象として検討を進めることとした.
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