研究概要 |
目的:抗リウマチ薬Leflunomideや分子標的抗癌剤EGFR-TKIなど新規治療薬剤の導入に伴い、日本人に頻発した致死的急性肺障害が報告されている。一方、特発性間質性肺炎では古くから「急性増悪」による致死的病態が知られ、疫学研究から日本では欧米諸国に比べて高頻度であること理解されている。本研究では肺障害の発生に密接に関与するサーファクタント(SP)産生や上皮間葉移行(EMT)とLeflunomide活性体HMR1726の関与をin vitro、またin vivoマウス肺におけるプレドニゾロン(PSL),LeflunomideのSP-B産生ならびにEMTを検討した。 方法:SP-B産生細胞H441、上皮細胞株A549を用いてin vitroにてHMR1726、PSL、付随するサイトカイン発現(TNF-a,TGF-b)がSP-B産生に与える影響をSP-B mRNA発現で比較検討し、C57BL/6マウス肺を用いてPSL,Lefluunomideの作用を検討した。 結果:in vitro,H441細胞のSP-B産生はTNF-a,TGF-b存在下でPSL+HMR1726曝露によりSP-B産生を抑制した。TNF-a,TGF-b非共存下ではHMR1726はSP-B産生を抑制しなかった。またA549ではHMR1726はαSMA平滑筋アクチン産生が増強した。一方、C57BL/6マウスにおけるSP-B産生はPSL 60,90mg/kg,2日間投与により増強した。 まとめ:PSLはin vitro,in vivoいずれの場合にもSP-B産生を増強した。HMR1726は単独ではSP-B産生に影響を与えないが、TNF-a,TGF-b共存下で抑制し、EMTが観察されたことから、線維化病態においてLeflunomideはSP-B産生を抑制し、EMTを誘導する可能性を示唆した。本研究から薬剤誘発肺障害、線維化病態の治療標的として形質転換の阻止が挙げられる。
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