研究概要 |
気管支喘息では気道のアレルギー性炎症が病態の本質である。気道炎症が長期に継続すると,気道組織の改変,すなわちリモデリングが成立し難治化の要因となると考えられている.ヒアルロン酸(HA)は,細胞外マトリックス成分として気道をはじめとする生体内に広く存在し,様々な生物活性を有する.我々は,HAがその機能を果たすために重要な結合タンパク(serum-derived hyaluronan-associated protein ; SHAP)の構成成分であるビクニンに対するノックアウト(KO)マウスを用い,気道アレルギー反応におけるHAの関与を検討した. DBAマウスを卵白アルブミン(OA)で腹腔感作した後,OAの吸入チャレンジを2週間に亘って連日施行,チャレンジ前後におけるメサコリン(Mch)吸入に対する気道反応性の変化,及びOAそのものによる気道反応を,野生型とビクニンKOマウスとで比較した,OVA感作により,即時型気道反応はビクニンKOマウスも野生型マウスも観察されたので,IgE等に依存した生物反応は存在していると考えられる.しかし、2週間及び4週間のOVA吸入暴露後のMchに対する気道反応性は,KOマウスの方が野生型より亢進していた。4週間OVA吸入暴露後の血清OVA特異IgG1は,ビクニンKOマウスで有意に高レベルであった。 組織学的検討では感作マウスの気道炎症はビクニンXOマウスで強い傾向があったが、気管支肺胞洗浄細胞の分画や細胞数に有意差は認められなかつた。以上よりビクニンやSHAP-HAは,気道の免疫応答を減弱化し、気道れん縮を抑制することによりひいては気道リモデリングを防止する働きを持つ可能性が考えられる.今後より詳細に免疫学的・生理学的検討を加えて、その機序を明らかにしていく予定である.
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