研究概要 |
対象:方法'97年から'02まで当院で手術を受け、再発後gefitinibを投与された肺癌患者33例を対象とした。手術により摘出した組織を用いて癌組織由来のヒト上皮性成長因子受容体(EGFR)遺伝子、KRAS遺伝子の変異、EGFR遺伝子増幅を調べ、それらと臨床効果との相関を検討した。腫瘍組織サンプルのパラフィン包埋切片、凍結標本よりゲノムDNAを抽出した。DNAを名古屋市立大学第二外科学教室に送付し解析を行った。対象の遺伝子はEGFR Exon 18,19,20,21とKRAS Exon 1であった。抗腫瘍効果の検討は胸部CTで行いWHOの効果判定を用いた。結果:腫瘍組織が充分採取できなかった6例を除き27例が最終解析の対象であった。DNA抽出に関し12検体はパラフィン包埋より、15検体は凍結組織より行った。27検体中ミスセンス、インフレーム欠損変異は9例に検出された。その9例中5例(55.6%)に臨床的奏功を認めた(P=NS)。EGFRコピー数の増加(3以上)は9例中の6例に認められ,KRASの変異はどの症例にも認められなかった。生存と臨床因子(性別、喫煙歴、肺胞上皮癌)、EGFR遺伝子変化(EGFR遺伝子異常有り/無し(525日/357日;生存期間中央値;p=0.310)EGFRコピー数≧3.0/<3.0(465日/307日;p=0.669))といずれも有意な差は認められなかった。解釈:従来の報告どおりの遺伝子変異を認めたが、臨床相関との一致を認めなかった。症例数が少ないこと、retrospective analysisであることが考えられる。しかしながら従来報告されていない遺伝子変異も検出されており、EGFRの遺伝子変異はさらに多岐にわたる可能性が示唆された。
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