研究概要 |
【目的】レニン アンギオテンシン系の抑制は糖尿病腎症の進展のみではなく、その発症を抑える可能性も指摘されている。しかしそのメカニズムは未だ明らかではない。 【方法】1.糖尿病発症前の約11週齢のOLETFラットと対照ラット(LETO)にアンギオテンシンレセプター拮抗薬であるOlmesartan(OLM)を投与し、血圧、腎血流量(RBF)、腎表面血流(SBF)、皮質深部血流量(DBF)を測定した。 2.約40週齢の発症後のOLETFラットの大動脈にクランプを掛け腎還流圧を調整し、同様に血行動態を測定した。 【結果】1.11週齢の発症前のOLETFでは血糖値は両群で差は認めなかったが、体重は有意にOLETF群で大きかった。OLMは両群で有意に同程度血圧を低下させた。OLMはLETO群において有意にSBFを上昇させたが(from594±62to672±71PU ; p<0.05),OLETF群では有意な変化を認めなかった。DBFでは逆にOLETF群において有意な上昇を認めたが(from264±37to309±51PU ; p<0.05)、LETO群では有意な変化は認めなかった。 2.40週齢では、両群とも同程度に腎還流圧を下げた。SBFは両群共に有意な変化を認めなかったが、DBFはOLETF群がLETO群に比して有意な低下を示した(OLETF83.9±1.7%,LETO95.0±3.4%,p<0.05)。 【結論】糖尿病発症前に、すでに血行動態異常が存在しOLMはそれを改善する。その異常に関しては深部血行動態も重要と考えられる。
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