研究概要 |
本研究の目的は糸球体障害修復過程におけるギャップ結合の役割について明らかにすることであるが、本年度は以下の検討を行った。本年度はラットメサンギウム増殖性腎炎モデルを用いてギャップ結合構成蛋白であるコネキシン37,40,43の発現変化を検討した。mRNAの継時的変化はReal-Time RT-PCR法を用いて、蛋白の発現変化は蛍光抗体法・ウエスタンブロット法を用いた。また、コネキシンの局在について免疫電顕を用いて検討した。蛍光抗体法ではコネキシン40は糸球体メサンギウム領域及び糸球体外メサンギウム細胞に比較的強く発現していた。糸球体外では血管内皮細胞に発現が認められた。コネキシン43も同様の分布が認められた。免疫電顕法による検索ではコネキシン40,43ともにメサンギウム細胞間の接着部位に発現が認められた。糸球体内皮細胞での発現内皮細胞-メサンギウム細胞間の発現は確認できなかった。輸入輸出細動脈では血管平滑筋に発現が認められた。糸球体外血管では内皮細胞・平滑筋細胞に発現が認められた。コネキシン37,40のmRNAは腎炎惹起後3,7日で発現が低下し、14日後では回復していた。コネキシン43は同様の傾向も見られるが変化は37,40に比して少なかった。コネキシン40,43のウエスタンブロット法での蛋白発現変化もmRNAの発現変化と平行した。コネキシン37については適当な抗体が得られず検討できなかった。蛍光抗体法での検討では糸球体内のメサンギウム領域の発現が3,7日で減少し7日で回復傾向を示したが、糸球体外メサンギウム領域ではその発現に大きな変化は認められなかった。本年度の検討からメサンギウム増殖性腎炎モデルににおいてメサンギウム細胞のコネキシン発現に変化があり、腎炎の障害あるいは回復過程においてコネキシンが何らかの役割を果たすことが推測された。
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