研究概要 |
本研究の目的は糸球体障害修復過程におけるギャップ結合の役割について明らかにすることである。培養系を用いた検討では、ヒト糸球体内皮細胞をLPS, TNF-α, IFN-γで刺激し、刺激後24時間でのギャップ結合の機能変化と、ギャップ結合構成蛋白コネキシン(Cx)37,40,43の変化をreal time RT-PCR,及びウエスタンブロッティング(WB)で検討した。LPS, TNF-αはギャップ結合の機能を増加させ、IFN-γは低下させた。Cxの発現変化は適当な抗体がなかったためCx43のみの解析となったが、mRNAと同様にLPS, TNF-αで増加し、IFN-γで減少した。mRNAの変化はCx43では蛋白発現の変化と同様な結果となったが、Cx37,40ではLPS, TNF-αで減少し,IFN-γではcontrolと差がなかった。これらからギャップ結合の機能変化は主にCx43の変化によると考えられた。ラットメサンギウム(Mes)増殖性腎炎モデルを用いた検討ではギャップ結合構成蛋白であるCx37,40,43の発現変化を検索した。蛍光抗体法ではCx40は糸球体Mes領域及び糸球体外Mes細胞に比較的強く発現していた。糸球体外では血管内皮細胞に発現が認められた。Cx43も同様の分布が認められた。免疫電顕法による検索ではCx40,43ともにメサンギウムに発現が認められた。糸球体内皮細胞での発現内皮細胞-Mes細胞間の発現は確認できなかった。輸入輸出細動脈では血管平滑筋に発現が認められた。糸球体外血管では内皮細胞・平滑筋細胞に発現が認められた。Cx37,40のmRNAは腎炎惹起後3,7日で発現が低下し、14日後では回復していた。Cx43は同様の傾向も見られるが変化はCx37,40に比して少なかった。Cx40,43のWBでの蛋白発現変化もmRNAの発現変化と平行した。Cx37については適当な抗体が得られず検討できなかった。蛍光抗体法での検討では糸球体内のMes領域の発現が3,7日で減少し7日で回復傾向を示したが、糸球体外Mes領域ではその発現に大きな変化は認められなかった。本年度の検討からMes増殖性腎炎モデルににおいてMes細胞のコネキシン発現に変化があり、腎炎の障害・回復過程においてCxが何らかの役割を果たすことが推測された。
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