研究課題/領域番号 |
17590823
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
木村 秀樹 福井大学, 医学部, 助教授 (20283187)
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研究分担者 |
吉田 治義 福井大学, 医学部, 教授 (80135574)
藤井 博 新潟大学, 医歯学系, 助教授 (90165340)
広田 喜一 京都大学, 大学院医学研究科, 講師 (00283606)
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キーワード | hypoxia / proximal renal tubular cells / lipid-binding proteins / 脂質親和性転写因子 / PPAR / 進行性腎障害 |
研究概要 |
1.低酸素とTNF-αのPPAR-γ発現、MCP-1発現への影響 まず、cDNAアレイ解析で、低酸素下での脂質親和性転写因子の遺伝子発現変化をスクリーニングしたところ、PPAR-αが約20%、PPAR-γは約70%、RXR-αは約30%減少していた。FXRの発現には著変を認めなかった。 次に、培養ヒト近位尿細管上皮細胞(HPTEC)において、定常状態、TNF-α刺激、低酸素刺激でPPAR-γの発現がどのように変化するかを検討した。正常酸素下24時間後に比較して、低酸素下24時間後には、PPAR-γのmRNAは57%減少し、48時間後には80%減少した。一方、正常酸素下48時間後では、PPAR-γのmRNA量はほぼ不変であった。TNF-α刺激では、非刺激と比較してPPAR-γのmRNA量は24時間後、48時間後で変化しなかった。 さらに、イムノブロット法でPPAR-γ蛋白量を解析した。正常酸素の対照に比して、低酸素刺激では、その蛋白量は24時間後に20%減少、48時間後に30%減少した。TNF-α刺激では、非刺激と比較してPPAR-γの蛋白量に24時間後で変化はなかった。 HPTECにおいて、低酸素刺激はMCP-1mRNA量と蛋白量を48%、19%程度減少させ、TNF-α刺激はMCP-1mRNA量と蛋白量を5.8倍、3.9倍に増加させた。 2.PPAR活性化薬の抗炎症作用の検討 PPAR-γ活性化薬のHPTECのMCP-1産生への影響を検討した。15d-PGJ2(10μM)は、定常状態のMCP-1産生をmRNA量で69%、蛋白量で41%減少させ、TNF-α刺激のMCP-1産生をmRNA量で60%、蛋白量で49%減少させた。Pioglitazone(3μM)は、定常状態のMCP-1産生をmRNA量で34%、'蛋白量で21%減少させ、TNF-α刺激のMCP-1産生をmRNA量で49%、蛋白量で4%減少させた。低酸素下では、15d-PGJ2、pioglitazoneともにMCP-1発現の抑制作用は減弱した。PPAR-γ特異的阻害薬(GW9662,2.5μM)を用いてMCP-1発現抑制作用のPPAR-γへの依存性を検討したところ、15d-PGJ2では約30%が、pioglitazoneでは約80%がPPAR-γに依存性であることが判明した。 3.今後の検討 今年度の研究で、PPAR-γ活性化薬のHPTECでのMCP-1発現抑制作用(抗炎症作用)が判明した。次年度では、PPAR蛋白、FABP蛋白の過剰発現が、同抗炎症作用を増強するか否かを検討し、PPAR-β、FXR活性薬の作用についても解析したい。また、低酸素・虚血マウスでの脂質親和性転写因子の発現動態も解析する予定である。
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