研究概要 |
(1)PPAR-γ活性化薬のPPAR-γ依存性の転写活性亢進作用とMCP-1、PAI-1発現への影響 培養ヒト近位尿細管上皮細胞(HPTEC)においては、十分量のPPAR-γ蛋白発現が検出され、PPAR-γ活性化薬のPGJ2(5μM)はPPRE-lucプラスミドの転写活性を約3倍に亢進させた。PGJ2とpioglitazoneは正常酸素下、TNF-α刺激下のMCP-1発現を減少させ、この作用のそれぞれ約30%と80-100%がPPAR-γ依存性であった。一方、PGJ2は、正常酸素下、TNF-α刺激下のPAI-1発現を相加的に増強し、この作用はPPAR-γ非依存性であった。Pioglitazoneは、PAI-1発現に有意な影響を与えなかった。PGJ2のPAI-1発現増強作用は、PD98059、genisteinで抑制されたため、MAPKキナーゼとチロシンキナーゼの活性化を介するものと推測された。 (2)脂質親和性転写因子の発現ならびにその抗炎症作用に対する低酸素の影響 HPTECにおいて、CDNAアレイ解析により脂質親和性転写因子(PPAR-α,β,γ、RXR-α,β、RAR-α,β、FXR)について正常酸素下の発現量を検討した。すべての遺伝子に有意な発現を認めたが、相対的な発現量は、PPAR-αを1とするとRXRが最大で10.1倍、FXRは5.4倍、PPAR-γは2.1倍であった。次に、低酸素刺激で脂質親和性転写因子のmRNA発現がどのように変化するか検討した。Glut 1の発現が著しく増加を示す48時間の低酸素刺激では、PPAR-γmRNA発現が最も高度に減少(-80%)した。PPARsとRXRsの発現量は全般的に減少し、RARsとFXRの発現量は不変から増加を示した。PPAR-γ蛋白の発現は、低酸素下で約30%減少した。PGJ2,pioglitazoneのMCP-1発現抑制作用は、低酸素下では減弱する一方で、PGJ2のPAI-1発現増強作用は、低酸素下でさらに亢進した。この多様性はPGJ2のPPAR-γ非依存性作用が一因であると考えられた。 肝型脂肪酸結合蛋白のmRNA発現については、正常酸素の対照に比して、低酸素刺激では、その発現量は48時間後に3.4倍に増加した。今後は、蛋白発現の解析を予定している。
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