研究課題
基盤研究(C)
糖尿病性腎症モデルにおける新規内分泌因子の意義を検討し、以下の研究成果を得た。1.CTGF(CCN2)の糖尿病性腎症における意義の検討CTGFはTGF-βの下流で働く線維化促進因子であるが、腎では糸球体上皮細胞(podocyte)に発現する。Nephrinpromoterを用いてpodocyte特異的CTGF過剰発現(Tg)マウスを作製、解析した。自然経過では変化を認めなかったが、streptozotocin(STZ)誘発糖尿病モデルではCTGF-Tgマウスで蛋白尿が野生型と比べ約3倍に増加した。またメサンギウム基質拡大とpodocyte数減少、podocyteの空胞変性を認めた。以上より、CTGFは糖尿病性腎症の際podocyte傷害を増悪させることが示された。2.Cyr61(CCN1)の糖尿病性腎症における意義の検討Cyr61はCTGFと同様podocyteに発現するが、腎保護作用が示唆される。Nephrin promoterを用いてCyr61-Tgマウスを確立し、STZ糖尿病を誘発した。Cyr61-Tgマウスでは野生型に比し糸球体腫大の有意の軽減を認め、糖尿病性腎症の病態においてCr61が腎保護的に作用する可能性が示された。3.レプチンの糖尿病性腎症における意義の検討脂肪萎縮症モデルのA-ZIP/F-1マウスの腎病変を解析し、高度の蛋白尿と糸球体硬化を伴う進行期ヒト糖尿病性腎症に極めて類似の所見を呈することを明らかにした。このモデルはレプチンTgマウスとのかけ合わせ、あるいはレプチン皮下投与にて著しく病態が改善した。また肥満糖尿病モデルのKKAyマウスとレプチンTgマウスとのかけ合わせで糖代謝と腎組織像の改善を認めた。以上より、糖尿病性腎症におけるレプチンの腎保護作用が示唆された。4.Na利尿ペプチドの糖尿病性腎症における意義の検討脳性Na利尿ペプチド(BNP)を過剰分泌するBNP-TgマウスにSTZ糖尿病モデルを作製した。BNP-Tgマウスで蛋白尿・メサンギウム基質増加の明らかな改善とともに、この機序にERK抑制が重要であることを見出し、Na利尿ペプチドの治療的意義が示唆された。
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