研究概要 |
尿濃縮の中核をなすバゾプレッシンの2種類の受容体のうち、V1a受容体はその機能がよくわかっていないが、V2受容体の機能調節を司っているというのが,我々の仮説である。 V1a,V2受容体の転写活性への相互作用については、LLC-PK1細胞にラットV1a受容体遺伝子を導入し、V1a受容体が存在することで,V2受容体のプロモーター活性が低下することを確認した。そこで、その詳しい機序に付いて、さらに検討を行なった。V1a受容体はGq11を活性化し、プロテインキナーゼCを活性化することが知られており、プロテインキナーゼCの刺激薬であるPMAによりV2受容体プロモーター活性が、低下することを確認した。PMA存在下では、バゾプレッシンによるcAMP産生も抑制されることから、V1a受容体への刺激が、PKCの活性化を介して、セカンドメッセンジャーであるcAMP産生の低下を来すことが、プロモーター活性抑制の鍵を握っていることが確認された。現在、細胞内カルシウム濃度の測定により、さらに確認実験中である。 この実験では、LLC-PK1細胞を用いたが、発現しているV2受容体は、豚V2受容体であるため、より、確実な実験のために、SV40トランスジェニックラットより、集合尿細管を単離、培養し、新たなcell lineを作製した。トランスジェニックマウスはよく行なわれているが、トランスジェニックラットでは、これまで報告はない。現在、V2,V1a受容体の遺伝子、蛋白発現の確認を、real time PCR,Western blot等において、検討中である。今後、その発現が確認されたならば、このcell lineを用いて、同様の実験を行ない、さらにRNAiを用いて、V1a受容体のない状態での、V2プロモーター活性の変化を測定する予定である。 V1a受容体ノックアウトマウスでは、尿の濃縮力や脱水、代謝性アシドーシスに対する反応では、大きな差はみられなかった。AVP感受性のcAMP産生についても検討したが、大きな差は見られなかった。そこで、V1a受容体トランスジェニックマウスでも、尿の濃縮力や脱水に対する反応では、大きな差は認めなかった。V1a受容体の生理的役割については、現在も、検討中である。
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