研究概要 |
尿濃縮は、腎臓の最も重要な働きであり、その中核をなすのが抗利尿ホルモンである。抗利尿ホルモンV1a受容体によるV2受容体を介した抗利尿作用の抑制が、promoter活性の調節を介しているのかを検討するために、LLC-PK1細胞を用いてV1a受容体を恒常的に多量発現するcell lineを我々は作成した。V2受容体のプロモーターをラットのIMCD mRNAを用いてPCRクローニングし、luciferase reporter vectorにサブクローニングし、このコンストラクトを先に作成したcellに一過性にトランスフェクションを行った。その後種々の濃度のAVPを細胞培養液中に加え、培養し、3-48時間後に細胞のルシフェラーゼ活性生を測定したところ、AVPのV1a受容体の存在が、V2受容体転写活性を抑制していることが判明した。この論文は、Am J physiol Renal Physiolにacceptされた。一つのホルモンの二つの受容体が、一つの細胞内で局在を異にして存在し、他方の受容体の転写活性を調節しているということを、初めて、我々は明らかにした。 また、脱水時にV2受容体の発現が、予想とは逆に減少する事が知られていたが、それは、腎髄質でのプロスタグランディン産生によることを明らかにし、Am J physiol Renal Physiolに掲載された。 V1aノックアウトマウスでは、正常時や脱水時には、尿量は正常であるが、多量飲水時には、尿量が増えることから、V1a受容体の機能は、多量飲水時の尿量調節にある可能性が示唆された。今後も、V1a, V2受容体によるお互いの活性調節の機序に迫っていきたい。
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