研究概要 |
ヒトの食塩感受性高血圧症診断への応用 高血圧患者におけるプロスタシンの役割を解明するために、私たちはプロスタシン特異的RIAを開発した。このRIAを用いて、121人の高血圧患者と26人の健常者から採取した尿中のプロスタシン濃度を測定した。同時に、血液検体を採取し、生化学パラメーターやレニン活性、アルドステロン濃度なども測定した。 その結果、尿中プロスタシン濃度は尿中アルドステロン濃度と極めて強い正の相関があることが判明した(R=0.729,P<0.0001)。さらに尿中プロスタシン濃度は、腎臓における上皮型Naチャネル(ENaC)活性の指標である尿中Na/K比とも有意な不の相関があった(R=-0.41,P<0.0001)。また、尿中プロスタシン濃度は血漿アルドステロン濃度とも有意な正の相関を示した。しかしながら、今回の対象がすでに何らかの降圧剤治療を受けている患者集団であったため、;血圧の値そのものと尿中プロスタシン濃度の間には有意な相関が得られなかった。 この結果より、私たちは高血圧患者において血漿・尿中アルドステロン濃度は有意に尿中プロスタシン濃度に相関し、尿中プロスタシン濃度は腎尿細管におけるENaC活性生の指標になりうると考えた。私たちはこれまでに、原発性アルドステロン症患者においてアルドステロンがプロスタシン発現を誘導することを報告しているが、その現象が高血圧という比較的一般的な患者集団においても観察しうることを今回の調査は示唆していると思われる。
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