研究概要 |
プロスタシン過剰発現動物モデルの作成 ヒトのプロスタシンを発現するアデノウイルスベクターを作製し、ラットに投与したところ、投与後5日目より血圧が有意に上昇した。さらに血漿アルドステロン濃度がプロスタシン過剰発現ラットにおいて有意に上昇していた。副腎を摘出するとアルドステロン濃度が低下するため、アルドステロンの産生部位は副腎であることが明らかとなった。 ヒトの食塩感受性高血圧症診断への応用 高血圧患者におけるプロスタシンの役割を解明するために、プロスタシン特異的RIAを開発し、121人の高血圧患者と26人の健常者から採取した尿中のプロスタシン濃度を測定した。その結果、尿中プロスタシン濃度は尿中アルドステロン濃度と極めて強い正の相関があること(R=0.729,P<0.0001)、腎臓における上皮型Naチャネル(ENaC)活性の指標である尿中Na/K比とも有意な不の相関があること(R=-0.41,P<0.0001)、さらに尿中プロスタシン濃度は血漿アルドステロン濃度とも有意な正の相関があることを示した。 この結果より、私たちは高血圧患者において血漿・尿中アルドステロン濃度は有意に尿中プロスタシン濃度に相関し、尿中プロスタシン濃度は腎尿細管におけるENaC活性の指標になりうると考えた。私たちはこれまでに、原発性アルドステロン症患者においてアルドステロンがプロスタシン発現を誘導することを報告しているが、その現象が高血圧という比較的一般的な患者集団においても観察しうることを今回の調査は示唆していると思われる。さらに、プロスタシンとアルドステロンの間にpositive feedback機構が存在する可能性も示唆している
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