研究概要 |
肥満、メタボリック症候群と慢性腎臓病(CKD)の関連について一般住民健診受診者を対象に5年間経過を観察した。メタボリック症候群を有する受診者は有さない受診者に比し約2倍のCKD発症率であった(Tozawa M, et. al.:Hypertens Res 30:937-943,2007)。同様な結果が久山町研究により示されている。断面調査の結果ではメタボリック症候群の構成因子数とCKDの頻度が正相関しており、CKD予防には構成因子数の減少が重要である。各構成因子のどれが最もCKD発症に関連するかについては観察期間が短く、結論には至らなかった。生活習慣に関連した他の因子として喫煙、飲酒、運動習慣などについては今後、検討する必要がある。肥満者では食塩感受性が強くなっているので、食塩摂取量のデータも今後必要になる。腹囲の測定は住民健診においては煩雑であり、時間を要することから実際的ではない。身長、体重から計算されるBMI(body mass index,kg/m^2)による代用で臨床上問題はない。日本人においてはBMI25以上より、肥満およびメタボリック症候群(腹囲の基準:男性〓85cm、女性〓90cm)によるCKD発症が有意に増加した。 また肥満者に多いとされる睡眠時無呼吸(sleep apnea syndrome,SAS)患者集団においてCKD患者が多いことを報告した(Iseki K, et. al.Hypertens Res 31:249-255,2008)。SASに多いとされる心血管障害の発症の一因にCKDが関与している可能性が考えられる。
|