研究概要 |
本研究に先立ちKidney International誌(65:621-5,2004)に"腎機能低下につれて日中に排泄しきれないNaを代償的に排泄するために夜間血圧が低下しなくなる(non-dipper)"と報告しました(圧利尿)。これは"腎機能低下時は尿濃縮能障害で夜間尿が増す"という従来の概念(希釈尿)に矛盾します。慢性腎疾患(CKD)の患者様(名古屋市立大学病院)に御同意を得て昼夜別蓄尿・24時間血圧測定を行い、腎機能低下につれ(1)圧利尿で夜間尿が増加する、(2)夜間血圧が日中の90%値に低下する所要時間が延長する、ことを明らかとしました。第28回日本高血圧学会(9月)に"腎機能が障害されるほど夜間血圧が下降するまでに長時間を要する:non-dipperの腎性機序を考える"として高得点演題(PO-01)に採択頂き、第38回アメリカ腎臓学会(11月)でも発表しました。"Polynocturia in chronic kidney disease is related to natriuresis rather than to water diuresis"のタイトルで論文化しNephrology Dialysis Transplantaion誌(21:2172-7,2006)にアクセプトされました。 以上のようにnon-dipper現象は「採血で検知しうる以前の予備能低下」を反映している可能性があります。最近、世界腎臓デーが提唱されました。その理由はCKDが心血管病の危険因子と判明したため、CKDを早期からみつけ心血管病を予防するためです。本年度は夜間血圧が下降するまでに要する時間をdipping timeと定義し、これがCKDの早期から延長し心血管病の危険因子であることを国際高血圧学会で提唱しました。さらにこの「日中夜間」といった変化で腎臓がみせる圧利尿の変化が「立位臥位」でも認められないかを検討しました。ここまでの検討では立位負荷試験で上述のCKDにおけるnon-dipper現象/腎予備能低下を検出しうることが判明し、学会発表・論文報告の準備中です。
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