研究概要 |
レヴィ小体病(LBD)はレヴィ小体型認知症(DLB),認知症を伴うパーキンソン病(PDD),認知症を伴わないパーキンソン病(PD)などを含む疾患概念である。LBD患者において認知機能に重要な役割をはたしている脳内コリン作動神経を評価するために,我々は,N-[^<11>C]-methyl-4-piperidyl acetateをリガンドに用いたPositron Emission Tomography(PET)施行し,脳内アセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性を測定した。平成19年度は,データ解析を中心に研究を進めた。当初,対象はDLB20例,PD20例,健常者20例の予定であったが,最終的に認知症を伴うLBD患者20例[DLB10例(75±4歳),PDD10例(75±4歳)],PD患者9例(66±6歳),健常者27例(64±10歳)を対象とした。各群のMinimental State Examinationの平均スコア(30点満点)は,DLB群19±5,PDD群18±6,PD群28±2,健常群29±1であった。Three-compartment modelを用いて脳内AChE活性を算出し,statistical parametric mapping2(SPM2)を用いた統計画像解析を施行した。DLB,PDD群ともに大脳皮質平均AChE活性値は健常対照群やPD群と比較して減少していた(統計学的には大脳皮質平均AChE活性値はDLB群とPD群間,DLB群と健常群間,およびPDD群と健常群間でp<0.01,PDD群とPD群間でp<0.05の有意差を認めた)。SPM2解析ではDLB群とPDD群の全ての皮質領域でAChE活性値の低下がみられ,DLB群とPDD群でそのパターンに明らかな相違はなかった。この結果は2007年に学会報告し,AChE活性とその他の認知機能検査結果,臨床症状,自律神経機能障害との関連を現在検討中である。以上の結果に加え,早期PD10例のAChE活性を測定しており,結果は雑誌投稿中である。現時点での解析結果から言えることは以下の2点である。(1)認知症を伴うLBDでは,より重度の脳内アセチルコリン系障害があり,これは認知機能障害を反映していると考えられる。(2)DLBとPDDの異同那しばしば議論されるが,大脳皮質AChE活性値の障害パターンに2者の相違は認められない。
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